谷川俊太郎氏揮毫

★ミッドナイト・プレスからのお知らせ

*松本亮氏の『金子光晴にあいたい』、里中智沙さんの『花を』を刊行しました。詳細は下記をごらんください。

*山羊塾第14回「松本亮『金子光晴にあいたい』を読んで」は、6月8日に開かれます。詳細はこちらをどうぞ。

岡田幸文の「聴無庵日乗」

*これまでの「聴無庵日乗」はこちらで読むことができます。

聴無庵日乗56(2019.3.31)

赤芽柳、古代の石、柚子

 「芸術新潮」4月号、追悼特集「梅原猛 人類への遺言」で、遺稿「人類の闇と光(仮題)」第一章を読んだ。これは先に出版された『人類哲学序説』をさらに発展させるものとして構想されたもののようだが、『人類哲学序説』を興味深く読んだ者としては、待望していたので、さっそく入手して読んだ。これからの人類に必要な思想は天台本覚論にあるとする梅原氏は、それを柱に据えて、西洋と東洋、そして古代から現代までの人類の思想史を渉猟し、その弁証法的綜合を意図したその壮大な構想は、なにものにも囚われない、梅原氏の強靭な思索と、時空を天翔る自由な想像力と、梅原氏本来の詩的直観とが一体となって実現されたもので、期待に違わぬ刺戟的なものであった。古今東西の思想史を語りつつ、「すべての民族、すべての人間にあてはまる」、つまり「人類」にあてはまる理論を創造しようとする哲学者・梅原猛の大きさを思い知らされる遺稿であった。梅原氏は、この論攷で人間について定義する。即ち、「人間は、戦争すなわち他の動物が決してしない同類の大量殺害をする動物である。」と。この遺稿「人類の闇と光」というタイトルを見たとき、梅原猛氏の最初の著作「闇のパトス」を思い出した。これは晦い論文で、いまだ読了していないのだが、もう一度挑戦したいと思う。

★新刊のお知らせ 松本亮『金子光晴にあいたい』

定価:本体2500円+税 装丁・大原信泉

 このたび、松本亮『金子光晴にあいたい』を刊行しました。これは、かつて「詩の雑誌midnight press」に連載されていたものを一冊にまとめたものです。松本氏は、1951年、金子光晴を訪ね、1975年、金子光晴が亡くなるまで親交を続けられた詩人であり、日本ワヤン協会を設立、主宰された方です。金子光晴と四半世紀をともにした松本亮さんのお話は、金子光晴を生き生きとよみがえらせます。「弱いものをやっぱり守らなきゃいけなという意識が常にあったんでしょうね。それで当然、戦争に反対ということになるわけなんです。あたりまえなんです。あたりまえなことをあたりまえに考えて強く書き進めていった人なんですね。」(松本亮)

 聞き手である山本かずこのあとがきにありますように、松本亮さんはこの連載を通して、金子光晴さんと再会していたのだと思います。松本さんの、金子さんに対する気持ちは、読む者にも伝わってきて、この本を読んでいると、「金子光晴にあいたい」という気持ちが強く涌いてきます。そして、松本亮さんが選んだ、金子光晴の十篇の詩を読むと、金子光晴がほんとうの詩人であったことを知らされるのです。なぜ、いま金子光晴と出会わなければならないのか。答えは、金子光晴のその詩のなかに、その生き方のなかにあることを、読む者ははっきりと知るでしょう。

 この本がひとりでも多くの人々に読まれることを願っています。

★新刊のお知らせ 里中智沙詩集『花を』

定価:本体2700円+税 装丁・大原信泉

詳細は、表紙をクリックしてください。

 このたび里中智沙さんの新詩集『花を』を刊行しました。これは、『手童(たわらは)のごと』(2008年 ミッドナイト・プレス)に続くものですが、日本の古典文学や古典芸能に造詣が深い里中さんの詩法はさらに奥行きを深め、時間的には過去と現在とを往還し、空間的には叙事と叙情とを行き交う、ことばの舞いは一段と深みを増して、読む者を堪能させます。一人でも多くの方々に、この詩集をお読みいただければうれしく思います。

 ここでは巻末に置かれた短い詩を紹介したいと思います。

 

 

  花を

 

 

えぐられた大地の

血のような赤土に

花を植える

一輪の

花は風にそよぎ やわらかに

傷口を撫でるだろう 

 

そして花は

蝶を呼ぶだろう 瑠璃いろの蝶を

蜂も呼ぶだろう 黄金(きん)色に翅ふるわせる蜂を

空から

鳥も降りてくるだろう

羽搏きの音に

ひとが足を止めるだろう

そして次の花が

 

ひとの手に抱かれて

一輪、また一輪と

血のにじむ大地をおおって やわらかに

お花畑がひろがるだろう

太陽()も もどってくるだろう

ひとはやっと

微笑むだろう

お花畑を囲んで

やっと 語りはじめるだろう

A5変型・上製・函入り 定価 本体2800円+税

*中村剛彦さんによる『聖シメオンの木兎──シリア・レバノン紀行』書評「ほんとうの旅、詩の旅」を掲載しました。

*井上輝夫『聖シメオンの木菟』の書評(高樹のぶ子氏、黒川英市氏)はこちらをごらんください。

*中村剛彦編集による「特集井上輝夫」では、既刊詩集抄に加えて、映像、翻訳詩抄、拾遺詩篇・散文抄を読むことができます。