谷川俊太郎氏揮毫

★ミッドナイト・プレスからのお知らせ

新刊のお知らせ 里中智沙詩集『花を』

定価:本体2700円+税 装丁・大原信泉

詳細は、表紙をクリックしてください。

 このたび里中智沙さんの新詩集『花を』を刊行しました。これは、『手童(たわらは)のごと』(2008年 ミッドナイト・プレス)に続くものですが、日本の古典文学や古典芸能に造詣が深い里中さんの詩法はさらに奥行きを深め、時間的には過去と現在とを往還し、空間的には叙事と叙情とを行き交う、ことばの舞いは一段と深みを増して、読む者を堪能させます。一人でも多くの方々に、この詩集をお読みいただければうれしく思います。

 ここでは巻末に置かれた短い詩を紹介したいと思います。

 

 

  花を

 

 

えぐられた大地の

血のような赤土に

花を植える

一輪の

花は風にそよぎ やわらかに

傷口を撫でるだろう 

 

そして花は

蝶を呼ぶだろう 瑠璃いろの蝶を

蜂も呼ぶだろう 黄金(きん)色に翅ふるわせる蜂を

空から

鳥も降りてくるだろう

羽搏きの音に

ひとが足を止めるだろう

そして次の花が

 

ひとの手に抱かれて

一輪、また一輪と

血のにじむ大地をおおって やわらかに

お花畑がひろがるだろう

太陽()も もどってくるだろう

ひとはやっと

微笑むだろう

お花畑を囲んで

やっと 語りはじめるだろう

*久谷雉さんの「詩の教室」第八講の講評を掲載しました。今回の入選作品は、奥間埜乃さんの「[もんじ]の策略」、参考作品は、谷口鳥子さんの「楠」、佐野豊さんの「シタ」です。

 なお、今回をもって、「詩の教室」は閉講となります。これまでご投稿してくださったみなさま、そして講師を務めていただいた久谷雉さんに御礼申し上げます。ありがとうございました。また別なかたちで再会できる日を楽しみにしています。

*第11回山羊塾講義録「田中冬二 「詩の力 近代の眼」」を掲載しました。こちらで読むことができます。

*八木幹夫さんが講師を務める「山羊塾」第12回、「下村康臣 哲学と詩作のアマルガム 哲学する詩」は11月10日です。

岡田幸文の「聴無庵日乗」

*これまでの「聴無庵日乗」はこちらで読むことができます。

聴無庵日乗50(2018.11.4)

アスター、コオリヤナギなど

 松本亮『金子光晴にあいたい』(聞き手・山本かずこ)には、「松本亮が選んだ一篇」として、金子光晴の詩が十篇紹介されている。それに、巻末に掲載された山本かずこ「七十二体の仏像」に引用された詩を加えて十一篇の詩を読んでいると、「哲学」とか「思想」ということばが目に入ってきた。煩をいとわず、その部分を引いてみる。

 

「かへらないことが

最善だよ。」

それは放浪の哲学。

           (「ニッパ椰子の唄」より)

 

空の奥は、ふかい闇で、思想家たちは

そこには虚無しかないと考へつづけた。

なる程、この思想の根源は、漆で磨きあげられ、

 

僕らを映し出しはすれ、そこから始まる

存在が姿をみせないので、

どれほど透徹してみせても、僕らは扇を

ひらくやうに、映された人間の処作をやるしかない。

               (「六道」より)

 

千年前の姿態で

ふくらんでる君達の胸は、

なにをおもふ。

蒸発した酒の香か。

濡れた唇か。

風になつて

消えうせた思想か。

人間とともに

亡びた唄か。

       (「ボルブドール仏蹟にて」より)

 

 いっけん金子光晴らしからぬ(?)語彙について、あれこれと思いをめぐらせていた次の瞬間、ある本を思い出した。それは、金子光晴の『絶望の精神史』という、1975年に出版された一冊のペーパーバックだった。もしかして、ここになにかあるかもと読み返すと、果たして、その終わりに次のようなことばが記されていた。 

 「絶望の姿だけが、その人の本格的な姿勢なのだ。それほど、現代のすべての構造は、破滅的なのだ。」

 なるほど、これは「思想」だ。そう考えて、先に挙げた詩をあらためて読み返すと、それらは新しい表情をもって、読む者に近づいてくるのだった。

 

   *

 

夏の太陽がはげしく照りつける路上に出てみると

あらわれているものとあるものとが相剋していた

あれは最後の機会だった

ぬるくなった缶ビールを飲みほし立ちあがると 見られていた

                       (四行詩 5

A5変型・上製・函入り 定価 本体2800円+税

井上輝夫さんの『聖シメオンの木菟』の書評(高樹のぶ子氏、黒川英市氏)はこちらをごらんください。

中村剛彦編集による「特集井上輝夫」をアップしています。既刊詩集抄に加えて、映像、翻訳詩抄、拾遺詩篇・散文抄からなるもので、詩人・井上輝夫氏の全体像を浮かびあがらせる入魂の特集です。ぜひごらんください。