谷川俊太郎氏揮毫

★ミッドナイト・プレスからのお知らせ

A5変型・上製・函入り 定価 本体2800円+税

 このたびミッドナイト・プレスでは、井上輝夫さんの『聖シメオンの木菟 シリア・レバノン紀行〈新版〉』を刊行いたしました。これは、1977年に国書刊行会から出版された同書を新装復刊したものです。生前から井上さんは同書の復刊を希望されていましたが、それがこのたび実現できたことを、版元としてうれしく思います。

 この『聖シメオンの木菟〈新版〉』は、1977年に刊行されたにもかかわらず、古さをまったく感じさせず、むしろ閉塞する現在に新たな光りを投げかける書物であると思います。お忙しい毎日をお過ごしのことと存じますが、お読みいただければありがたく存じます。

 

20182月吉日      ミッドナイト・プレス 岡田幸文

 

〈追記〉

 『聖シメオンの木菟』は、一九七三年夏、フランス留学からの帰途、シリア、レバノンを旅行した著者が、帰国後、旅の備忘録、心の記録として綴った紀行文である。「井上氏はただの通過者旅行者としてではなく、この紀行に書かれているとおり、運命的にシリアに結びつけられ、この西欧でも日本でもない別天地を見てきたのである」と、帯に飯島耕一氏が語るとおり、井上輝夫さんは、私たちには未知のシリア、レバノンの〈真実〉を詩的な文章で伝えてくれる。だが、この本の魅力はそれに尽きるのではない。シリア、そしてレバノンを旅しつつ、思索する詩人の声が、通奏低音のごとくこの一冊の書物の深部を流れているのである。思わず書き写したくなることばはいくつもあるが、次の一節などは、永遠の旅人、井上輝夫の精神を彷彿とさせる。

 

 「村へ戻って私たちはベイルートへ行ってくれるタクシーを捉えた。ベカの平野を走って峠道にさしかかる頃になるとすっかり陽がくれた。こんな時ほどすぎゆく時間と空間を移動することがぴたりと折重なって不思議な気持になることはない。転々と移動することは多分精神の健康に良いのである。なぜなら、そうした旅で人は永遠に明瞭な目的もなく常に(ゼロ)の新しい時間とつねに相対しているからである。聖パウロはキリスト教に改宗したのち、信仰の要諦をキリストの中に生きることだと云ったが、思うにそこにも通常ならざる、あえていえば、時間なき時間の気圏がひらけていたのではなかったか。私は旅を続けることがそれに似ているように思った。山をこえるとベイルートの光が地上の星座のように輝いて、ふたたび月明りをたたえた海原がみえた。」(註・文中「キリストの中に」の七文字に傍点あり)

*ミッドナイト・プレス協力によるイベント(中村剛彦元副編集長主催) を、故井上輝夫の名紀行文『 聖シメオンの木菟 〜シリア・レバノン紀行〜」復刊記念とともに 3/2にEggman tokyo eastにて開催いたします。詳細はこちらをご覧ください。→「ミッドナイト・プレス関連イベント」

*久谷雉さんの「詩の教室」第六講の投稿締切は2月28日です。第五講「〈骨〉から飛び出す〈肉〉が見たい」はこちらをごらんください。

*八木幹夫さんが講師を務める「山羊塾」第10回「大岡信 『うたげと孤心』の批評精神」は2018年5月12日に開催されます。詳細はこちらです。

【更新のお知らせ】

兼子利光「パゾリーニ探索」17(「パゾリーニの死(一九七五年)について考える」)を更新しました。(2018.2.21)

「聴無庵日乗」31(八木重吉の詩を読む)をアップしました。(2018.2.17)

壱はじめ「竝び机の詩窓」第五回「文字の外に生きる人々 〜映画『パプーシャの黒い瞳』に思う〜」をアップしました。(2017.11.5)

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中村剛彦編集による「特集井上輝夫」をアップしました。既刊詩集抄に加えて、映像、翻訳詩抄、拾遺詩篇・散文抄からなるもので、詩人・井上輝夫氏の全体像を浮かびあがらせる入魂の特集です。ぜひごらんください。

★ミッドナイト・プレスの2017年刊行詩集

阿部嘉昭『橋が言う