既刊詩集など

神山倫さんの第一詩集『こころえ』が刊行されました。帯に「あたたかく笑えます 家族、近所のおばさん、虫たちの詩です」とあるように、日々のなかで巡り合う一瞬をあたたかく捉える著者が遠く見晴るかす世界は光りにあふれています。そのなかから一篇を。

かがみ  神山倫

どかどか
鏡を片手に
わかい女性が電車に乗り込んできて
化粧をはじめる
まわりの迷惑などおかまいなしで
いらいらがつのる

ついに心の中で呪いの言葉をはく
《鏡を落としてしまえ》

そうしたらほんとに
鏡が落ちてくだけ散った

すみません、すみません、
女性は頭をさげて
わたしの足下に散らばった破片を拾う

すみません、すみません、
わたしも頭をさげて破片を拾った

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本体1500円+税

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川田絢音さんの新詩集『流木の人』(本体2000円+税)が刊行されました。『それは 消える字』(2007年)に続く著者11冊目の詩集です。一行一行、その彫琢されたことばは深く、読む者は詩のなんたるかを知らされます。そのなかの一篇「イニシュマーン」は東京新聞(09年2月28日付夕刊)に掲載されました。そこで、川田さんは「詩に添えてどうお話ししたらよいのでしょう」、「詩を書くことに居場所をえて、許された時を歩いていくばかりです」と短かいことばを寄せています。詩集のタイトルポエムを下に紹介します。

流木の人

わたしはどうなってしまったのか
岩に訊いても
ここが何処だか言ってもらえない

くぐもった声がして
断崖の下の岩礁に
人ほどの流木が打ち寄せられている

この世をあきらめられ
火の彼方をくぐり
深い波間を転がって来られた

藻屑も吸われず 仕草をなさらず
生きておられるのか
死んでおられるか
しずかに濡れて

枝葉もない白い姿
内へ内へとみずからを照らして
母が
あらわれてくださった

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佐藤朝子『おとなのぬり絵 その2』、『おとなのぬり絵 ポスト・カード・ブック』
これは、2002年に出版された『おとなのぬり絵』の続編です。佐藤さんが描いた物語の絵に、あなたの色が加わって、ingの物語ができあがる、その瞬間を、ぜひ味わってみてください。また、ポスト・カード・ブックではご自分で色を加えることによりオリジナルポストカードが誕生します。一枚一枚「あなた色」をたのしむと同時に贈り物としてもよろこばれると思います。 

『おとなのぬり絵 その2』
A5判・並製 図版32点 本体1500円+税
『おとなのぬり絵 ポスト・カード・ブック』
A6判・上製 図版12点 本体1000円+税

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里中智沙『手童〔たわらは〕のごと』本体2000円+税
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笹原玉子『この焼跡の、ユメの、県〔あがた〕』本体2000円+税
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伊藤博明『scintilla/閃光』本体2000円+税
浅野言朗『2⁶=64/窓の分割』 本体2000円+税(第41回横浜詩人会賞受賞)
五月女素夫『月は金星を釣り』本体2000円+税
近藤弘文『夜鷹公園』本体1500円+税
臼井裕之訳『ウィリアム・オールド詩集 エスペラントの民』本体2100円+税

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midnight press EXTRA「2008年夏、いま、詩はどこにあるか?」
この EXTRAは閲覧することができます。

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