★ミッドナイト・プレスの既刊詩集

松本亮『金子光晴にあいたい』

定価:本体2500円+税 装丁・大原信泉 2018年12月24日発行

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 このたび、松本亮『金子光晴にあいたい』を刊行しました。これは、かつて「詩の雑誌midnight press」に連載されていたものを一冊にまとめたものです。松本氏は、1951年、金子光晴を訪ね、1975年、金子光晴が亡くなるまで親交を続けられた詩人であり、日本ワヤン協会を設立、主宰された方です。金子光晴と四半世紀をともにした松本亮さんのお話は、金子光晴を生き生きとよみがえらせます。「弱いものをやっぱり守らなきゃいけなという意識が常にあったんでしょうね。それで当然、戦争に反対ということになるわけなんです。あたりまえなんです。あたりまえなことをあたりまえに考えて強く書き進めていった人なんですね。」(松本亮)

 聞き手である山本かずこのあとがきにありますように、松本亮さんはこの連載を通して、金子光晴さんと再会していたのだと思います。松本さんの、金子さんに対する気持ちは、読む者にも伝わってきて、この本を読んでいると、「金子光晴にあいたい」という気持ちが強く涌いてきます。そして、松本亮さんが選んだ、金子光晴の十篇の詩を読むと、金子光晴がほんとうの詩人であったことを知らされるのです。なぜ、いま金子光晴と出会わなければならないのか。答えは、金子光晴のその詩のなかに、その生き方のなかにあることを、読む者ははっきりと知るでしょう。

 

 この本がひとりでも多くの人々に読まれることを願っています。

里中智沙詩集『花を』

定価:本体2700円+税 装丁・大原信泉 2018年10月25日発行

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 このたび里中智沙さんの新詩集『花を』を刊行しました。これは、『手童(たわらは)のごと』(2008年 ミッドナイト・プレス)に続くものですが、日本の古典文学や古典芸能に造詣が深い里中さんの詩法はさらに奥行きを深め、時間的には過去と現在とを往還し、空間的には叙事と叙情とを行き交う、ことばの舞いは一段と深みを増して、読む者を堪能させます。一人でも多くの方々に、この詩集をお読みいただければうれしく思います。

 

 ここでは巻末に置かれた短い詩を紹介したいと思います。

 

  花を

 

 

えぐられた大地の

血のような赤土に

花を植える

一輪の

花は風にそよぎ やわらかに

傷口を撫でるだろう 

 

そして花は

蝶を呼ぶだろう 瑠璃いろの蝶を

蜂も呼ぶだろう 黄金きん色に翅ふるわせる蜂を

空から

鳥も降りてくるだろう

羽搏きの音に

ひとが足を止めるだろう

そして次の花が

  

ひとの手に抱かれて

一輪、また一輪と

血のにじむ大地をおおって やわらかに

お花畑がひろがるだろう

太陽も もどってくるだろう

ひとはやっと

微笑むだろう

お花畑を囲んで

 

やっと 語りはじめるだろう