★ミッドナイト・プレスの新刊

阿部嘉昭『橋が言う』

A5変型上製 94ページ 本体2400円+税 装丁・土田省三 2016年10月28日発行

 このたび、阿部嘉昭さんの詩集『橋が言う』を刊行しました。これは昨年出版した『石のくずれ』に続くもので、帯に「「減喩」を駆使した挑発的でしずかな八行詩集」と謳われているとおり、その詩の方法はさらに深化しました。「減喩」とはなにか。阿部さん曰く、「謎の提示とは異なり、ことばのはこびそれ自体がそこに単純に、理想的にはやわらかく「明示」されているにすぎない」と。この『橋が言う』一巻を、ことばのひびきを味わうように読んでいると、ふと別の時空に移動したような感覚に襲われます。その、しずかだけれども挑発的なことばのたたずまいは、読む者に詩の不思議を薫染させていくようです。

 ここでは、そのなかからタイトルポエムを読んでみたいと思います。

 

 橋が言う

 

橋「木のにおいでうかんでいるんだ

いぬをたかく拉する気概もあった

ふゆのあさここは霜をつなげて

けもののゆれにこそさきをゆずる

ひとはつれそうと前後ができるけど

ゆめのまましぬにふさわしくない

くっついてそいとげるひとでなしを

霜でひやしみちびいているんだ」

 

 ことばは記されているのに、それはなにも意味していない。なにも意味していないのに、それは生きている。この、新たな詩の生成の場を問う詩集『橋が言う』が、ひとりでも多くの方々に読まれることを願っています。

 

  *

 

 〈付記〉『石のくずれ』に続いて、『橋が言う』も土田省三が装丁してくれた。この詩集の装丁決定稿のメールを開いたのは828日の朝だったが、その日の未明に彼は心筋梗塞で死んでいたことを夕刻知らされたときは絶句するばかりだった。『橋が言う』はとてもよい仕上がりの詩集となったが、これが土田省三の最後の仕事となってしまった。残念でならない。