★ミッドナイト・プレスの新刊

石館康平『最後の抱擁』

B6並製 96ページ 本体2000円+税 2017年10月28日発行

 このたび、石館康平さんの『最後の抱擁』を刊行しました。

石館さんの詩と散文をはじめて読んだとき、いったい、この人はどのように詩の研鑽を積み重ねてきた方なのだろうと思ったものですが、その後実際にお会いして、石館さんが長く医学生物学領域の研究に従事されてきたこと、60歳を迎えた頃から詩を書き始められたこと、今年80歳を迎えられたことなどを知りました。まずは冒頭に置かれた詩を紹介したいと思います。

 

 夏は終わらない

 

道は真っ白だ

空は真っ青だ

家は真っ暗だ

そして誰もいない

 

暑熱の祭りは突然に終わる

夏は疲れぬままに熟し

秋の到来に譲るためではなく

来るべき夏のために退(しりぞ)く

 

いつだって何かが終わっている

終わって欲しくないものについてほど

終わりの兆しを捜し求める

つかんだときの倒錯の勝利、やがて受け入れる敗北

 

なんと静かで大きな退場なのだろう

夏よ

無償の豊饒よ

純粋な空虚よ

 

 一般に、詩は、読む人それぞれに印象が異なるものですが、この詩は、読む者に、詩において、なにか不可避な、そしてある種決定的な印象を刻印するものがあるような気がします。それがなんであるか、すぐにわかるものではありませんが、それはなんだろうと考え始めたとき、ひとは、この詩集を最後まで読むことになるのではないでしょうか。この奥行きの深い詩集が、ひとりでも多くの方々に読まれることを願っています。